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年の瀬の12月28日のことだ。日本経済新聞(朝刊)最終面に掲載された広告(全面3分の1段)が目に留まった。
<Blackstone 資産形成を補う、新たな選択肢。オルタナティブ投資とは?>がキャッチコピーだった。
総資産運用額1兆ドル(約148兆円)に達する世界有数の投資会社ブラックストーン(スティーブン・シュワルツマン会長・CEO。本社ニューヨーク)の日本向け広告である。筆者の記憶にある限り同社の新聞広告は初めてではないか。
先駆者は総資産3・9兆ドル(約577兆円)の米銀最大手JPモルガン・チェース(ジェイミー・ダイモンCEO。本社ニューヨーク)である。同社も一昨年来、同紙に同サイズの広告を何回も掲載している。
年初の株価高騰はその勢いが止まることを知らない。1月19日の東京証券取引所の日経平均株価の終値は前日比497円高の3万5963円で引けた。連日の高値更新で兜町は過熱状態になっている。
東証が公表した投資家別日本株投資データによると、2023年は外国投資家が6・3兆円と買い越し、昨年の牽引(けんいん)役となった。一方、個人3・2兆円、投資信託1・6兆円、金融機関6・8兆円と国内勢は売り越しだった。外国投資家は取引高の7割を占め、保有率も30%と最も高く、株価を動かす上で存在感が大きい。
改めて指摘するまでもなく、日本の家計金融資産は約2100兆円、うち現金・預金が半分の1100兆円を占める。このうちの僅か1%でも株式投資に回れば11兆円の流入となり、昨年の外国投資家の買い越し額の約2倍になる。
JPモルガンやブラックストーンだけでなく、運用資産残高10兆ドル(約1480兆円)の世界最大資産運用会社ブラックロック(ラリー・フィンク会長・CEO。本社ニューヨーク)もまた日本の個人投資家の将来性に熱い視線を向けるようになった。
これまで繰り返し「貯蓄から投資へ」が叫ばれたが、実現しなかった。ところが、22年11月に岸田文雄政権が提唱した「資産運用立国」はツキにも恵まれた。
それはインフレだ。デフレ環境下では、家計が現金をため込むのは理にかなう。しかし、2%持続のインフレが継続されれば現金の価値が目減り(10年で20%)し、家計がある程度の金融投資を試みる可能性が高まるのは必然だ。それが外国投資家の関心を呼び、海外の資産運用会社の日本アプローチを招く。果たして岸田政権にとってフォローの風となるのだろうか。
筆者:歳川隆雄(ジャーナリスト)
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2024年1月27日付週刊フジ【永田町・霞が関インサイド】を転載しています